『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
特に彼女は、きっと自分のことなど後回しになってる筈だ。

短い時間しか触れ合わない俺でさえも、祖母の行動には辟易するくらいだから。


それでも、彼女は一生懸命笑って接してる。

毎晩の子守唄に癒されてる…と言ったのは、もしかしたら本当のことなのかもしれない。




(子守唄か…)


子供の頃、祖母が毎晩のように歌って聞かせてくれたのは、外国のグループサウンズの曲だった。

耳馴染みな曲を彼女にも同じように歌ってやってた。
それを聞きながら、彼女は時々泣いてる。


様子を見に行った時、閉じてるまつ毛の先に涙の粒が光ってた。



(涙か…)


お嬢様から頼まれたユニコーン商品を探して、骨董市の中を彷徨ってる時にそれを見つけた。

腹這いになった二匹の猫が、クッションの上で顔を洗ってる。
磁器素材で出来たアンティークオルゴールは、見た所確かなブランドメーカーのものだった。


眠そうに目を擦っていた彼女を思い出した。
まつ毛の先にくっ付いてた白い固まりは、ひょっとしたら涙だったのではないだろうか。


(泣きながら俺の帰りを待ってたのか?…もしかしてそうなら、どうして避けるような行動をとってたのだろう…?)


手にしたまま眺めていた。そこへお嬢様が顔を出した。


「剛さーん、いい物ありましたー?」


甘える声にゾッとする。

「いいえ」と振り向いた先にいるお嬢様は、目を輝かせて「それ、可愛いっ!」と指差した。




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