『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
久城家きってのイケメンの聖は、女遊びが派手で賑やかしい男。
泣かせた女は数知れず、それでも反省一つしないサイテー野郎。

そんな奴でも、仕事ぶりだけは至って真面目で誠実だ。
小京都の店舗を幾つか任され、主に馬術製品を買い付けている。


今回、紗奈お嬢様にユニコーンを教え込んだのもきっと奴だ。
馬術製品から話が飛んで、「一角獣というのをご覧になったことがありますか?」と、言葉巧みに言い含めたに違いない。


…聖に会いたい一心で、お嬢様は俺の部屋へとやって来た。

けれど、今回はとんだ計算ミスだ。




「聖なら暫く此処へは来ないよ。今預かってるお客様が別の場所に移るまでは、寄りつかないと思う…」


バスローブに身を包んで出てきたお嬢様に伝えた。
少しむくれた表情で、彼女は「お客様って誰よ?」と聞いた。


「ばあちゃん。覚えてるだろ?夏の別荘で何度も会ってるから」



幼い頃、避暑として訪れていた高原の別荘近くに、三条家のログハウスもあった。
兄弟のいない一人っ子の紗奈お嬢様は、しょっちゅう久城家の別荘へ遊びに来ていた。

祖母はそんなお嬢様を「子供が一人増えようと二人増えようと同じ」だと言い、彼女の分も食事を用意してやっていた。



「おばあ様がいらしてるの⁉︎ まあ!新婚なのに⁉︎ 」


自分もその新婚家庭に邪魔しに来てるくせに驚く。
呆れ返りながらも俺は、彼女に付け加えて教えた。

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