『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「ばあちゃんは今病気なんだ。彼女は俺が留守の間、ずっとその世話をしてきてる。
だから紗奈さんに泊まられたら困る!とっとと迎えを呼んで帰ってくれ! でないと迷惑だ!」


毅然とした態度を見せると、いくらか反省した様な顔つきになった。
でも、そこからが世間知らずな人間のやることだ。

お嬢様はスルリとバスローブの紐を解いて近寄って来た。
投げ出す様に足を組み、座ってる俺の向かい側にあるソファに横たわった。



「…帰ってもいいけど?やることやった後でなら…」


ふふん…と流し目をする。

聖が来ないとなると、相手は誰でいいのか…という気がしてくる。


反吐が出そうになる。

こんな女ばかりで、本当に嫌になる。



…カタン!と椅子から立ち上がった。
彼女の側へ寄り、上から視線を送って断言した。


「見たくもないものを見せないで下さい。帰らないなら会社への立ち入りを禁止ますよ⁉︎ 買い付け旅行にも付き合いません!それでもいいですか⁉︎ 」


外国語なんか殆ど喋れもしないくせに…と思った。

彼女の気紛れな買い物に付き合ってやるのなんか俺くらいのものだ。

聖は女遊びが忙しくて、紗奈お嬢様のことは眼中にない。

その不満を買い物で解消してる。

それを俺はよく知ってるから。




ーー胸を肌けてたお嬢様は、ギュッと唇を噛んで俺を睨みつけた。
強くもないその視線を、俺は逆に睨み返した。


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