『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「久城さん、朝ご飯にしましょう！おばあちゃんが朝からはりきって作られたお味噌汁がお鍋いっぱいありますから！」


テキパキと動く姿は元気そうだ。

元気と言うよりも機械的な感じすらする。
ここがまるで会社のようにも思えてきてしまう。
それくらい機敏な動きだった。



「愛理さん、あの…」


声をかけるのも躊躇うような雰囲気の彼女に、俺は圧倒されっ放しだった。


「久城さん、今日はお仕事何時に終わりそうですか？帰られてからでいいので、ちょっとお話があるんですけど…」


持ってこられた朝食セットの箸を持とうとした俺に、彼女の方から質問された。
良く眠れたような顔つきで、真っ直ぐとこっちを見ている。


昨夜のことは気にしてなさそうだ。
いや、むしろ、まるで無かったことのように接している。



（何故だ…？）


一抹の疑問を感じながらも、彼女の問いかけに返事をした。



「今日は休みだよ。出張明けだからね」


アンティークショップの店員兼社長をしてると言えど、休みくらいは取る。
顧客の都合に合わせるから、ほぼ不定期にはなるけれど。


「話って何？…あっ、それから今日婚姻届を出しに行こう。丁度天気も良いから外でランチでも食べて…」

「それなんですけど…」

「んっ⁉︎ 」


箸を持って、味噌汁の入った椀を口元に持っていったところだった。

吸おうとするのを止め、椀を口から離した。

差し向けた視線に、彼女が少しだけ首を揺らす。
困ったような笑みを浮かべ、それでもやはり口にした。



< 136 / 249 >
表紙・目次

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop