『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「ごめんなさい…」と頭を下げたまま、彼女の掌は握り締められた。
その手の中に買ってきた土産品を渡して、一緒に生きていって欲しい…と、願うつもりでいたのに。
(また無駄になったか…)
指輪の注文だけは先延ばしていて正解だった。
きちんと彼女の意向を聞いてから選ぼうと思っていた矢先だった。
今ならまだ最悪な状況ではない。
彼女に傾き始めた自分の気持ちを、まだ全開にしてないからーーー。
「……取ってくる」
箸を置いて立ち上がった。
俺の方に目を向けた彼女の頬に涙が伝ってる。
その涙にどんな意味があっても、きっともう一つにはなれないのだろう。
お見合いしたこと自体が間違いで、自分にはついていけない…と彼女が言うのだから。
スタスタ…と歩いて寝室へ向かった。
黒い輪島塗の書類入れの箱の中から取り出した薄い紙切れ。
緊張しながら名前を書いた。
何があっても、隣に署名する人を大事にしよう…と誓った。
亡くなった両親の分も「幸せになりましょう…」と言ってくれた彼女に、どれだけの感謝を感じたか分からない。
(でも、全てが計算間違いだってことか……)
直感だけをアテに商売してきた俺には、ある程度の勘が冴えてると思った。
でも、実際はそんなものはアテにも何もなりはしない。
彼女は物なんかじゃない……。
血の通った意志のある人間なんだーーーー。
その手の中に買ってきた土産品を渡して、一緒に生きていって欲しい…と、願うつもりでいたのに。
(また無駄になったか…)
指輪の注文だけは先延ばしていて正解だった。
きちんと彼女の意向を聞いてから選ぼうと思っていた矢先だった。
今ならまだ最悪な状況ではない。
彼女に傾き始めた自分の気持ちを、まだ全開にしてないからーーー。
「……取ってくる」
箸を置いて立ち上がった。
俺の方に目を向けた彼女の頬に涙が伝ってる。
その涙にどんな意味があっても、きっともう一つにはなれないのだろう。
お見合いしたこと自体が間違いで、自分にはついていけない…と彼女が言うのだから。
スタスタ…と歩いて寝室へ向かった。
黒い輪島塗の書類入れの箱の中から取り出した薄い紙切れ。
緊張しながら名前を書いた。
何があっても、隣に署名する人を大事にしよう…と誓った。
亡くなった両親の分も「幸せになりましょう…」と言ってくれた彼女に、どれだけの感謝を感じたか分からない。
(でも、全てが計算間違いだってことか……)
直感だけをアテに商売してきた俺には、ある程度の勘が冴えてると思った。
でも、実際はそんなものはアテにも何もなりはしない。
彼女は物なんかじゃない……。
血の通った意志のある人間なんだーーーー。