『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
自動ドアの開いたエントランスには、黒っぽい石でできた台座がある。
その上に乗ったタッチパネルは、住民の指紋照合一つでロックが外れる仕組み。
ここに住んでる時、なんて行き届いた防犯システムだろう…と感心した。
(…当たり前だったんだ。ここはセレブな人達が住んでるんだから…)
何も知らずに住み込んでたあたしが愚かだった。
この人のことを何も分からず、間違えてたんだから仕方ないーーー。
銀色のメタリック調の扉をした10人乗りのエレベーターが降りてくる。
その前に佇んだまま何も言わない彼が恐ろしくて、ずっと黙り込んでた。
チン…!と到着を知らせるベル音が鳴り響き、扉は音もなく開いた。
ドキドキドキとしながら乗り込む。
狭い空間に閉じ込められて、あたしは改めて鏡に映った自分の身姿に気づいた。
…施設で働いてる時の格好のままだった。
黒のジャージズボンにブルーの半袖Tシャツ、ユニクロで買った薄っぺらいヒートテックの長袖を下に着て、袖口は肘辺りまでたくし上がってる。
慌てて袖を伸ばし、裾を引っ張る。仕事中に身に付けてたエプロンは外してたけど、きっと不快なニオイが沁み付いてるに違いない。
嫌な思いをさせてたらどうしよう…。
気持ち悪くなったりしてないかな…。
余計なことを考え過ぎて、思わずしゃっくりが出そうになる。
口元に持っていった指先が、まだ微かに震えてる。
武内との再会が脳裏にこびり付いてて離れない。
これから毎日のように、あの男と顔を合わすのかと思うとぞっとする。
その上に乗ったタッチパネルは、住民の指紋照合一つでロックが外れる仕組み。
ここに住んでる時、なんて行き届いた防犯システムだろう…と感心した。
(…当たり前だったんだ。ここはセレブな人達が住んでるんだから…)
何も知らずに住み込んでたあたしが愚かだった。
この人のことを何も分からず、間違えてたんだから仕方ないーーー。
銀色のメタリック調の扉をした10人乗りのエレベーターが降りてくる。
その前に佇んだまま何も言わない彼が恐ろしくて、ずっと黙り込んでた。
チン…!と到着を知らせるベル音が鳴り響き、扉は音もなく開いた。
ドキドキドキとしながら乗り込む。
狭い空間に閉じ込められて、あたしは改めて鏡に映った自分の身姿に気づいた。
…施設で働いてる時の格好のままだった。
黒のジャージズボンにブルーの半袖Tシャツ、ユニクロで買った薄っぺらいヒートテックの長袖を下に着て、袖口は肘辺りまでたくし上がってる。
慌てて袖を伸ばし、裾を引っ張る。仕事中に身に付けてたエプロンは外してたけど、きっと不快なニオイが沁み付いてるに違いない。
嫌な思いをさせてたらどうしよう…。
気持ち悪くなったりしてないかな…。
余計なことを考え過ぎて、思わずしゃっくりが出そうになる。
口元に持っていった指先が、まだ微かに震えてる。
武内との再会が脳裏にこびり付いてて離れない。
これから毎日のように、あの男と顔を合わすのかと思うとぞっとする。