『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
あんな人と一緒に仕事するなんてまっぴら御免。
今すぐにでも辞めたい気分になるけど、そんな事などできもしないーーー。
「…大丈夫?」
振り向かれて聞かれた声にビクつく。
目の前に映るカーキ色のコートから雨粒の雫が流れ落ちる。
撥水加工されてるであろう高級品のコートに目をやって、コクッと首だけうな垂れた。
ーー目を見るのは怖かった。
さっきの鋭い視線も頭に残ってるけど、何よりもこの間の別れが頭にあった。
婚姻届を返してもらった日、久城さんは迎えに来た両親に対して深く頭を下げた。
「僕の不徳の致すところで、愛理さんにはご迷惑をかけしました。誠に、申し訳ございません…」
いきなり詫びだした彼に、両親は理由も聞かずに謝った。
「こちらこそ、躾の出来ていない娘で……申し訳ありません…」
頭を上げてくれるよう何度も説得した。
でも、彼はそれに耳を貸さず、ずっと俯いてるままだった。
部屋を出て行く時、今までのお礼を言おうかと思ったけど、ずっと目を合わそうとしない彼に何も言えずにドアを閉めた。
かける言葉もなく外へ出て、マンションから離れていく軽トラックの荷台に乗りながら、歪んでいく視界の向こうに小さくなっていくお城を見つめた。
……最後まであたしを見てくれなかった久城さんのことを思った。
ーーあの中に残されたおばあちゃんは、これから先どうなるのだろう…と考えた。
今すぐにでも辞めたい気分になるけど、そんな事などできもしないーーー。
「…大丈夫?」
振り向かれて聞かれた声にビクつく。
目の前に映るカーキ色のコートから雨粒の雫が流れ落ちる。
撥水加工されてるであろう高級品のコートに目をやって、コクッと首だけうな垂れた。
ーー目を見るのは怖かった。
さっきの鋭い視線も頭に残ってるけど、何よりもこの間の別れが頭にあった。
婚姻届を返してもらった日、久城さんは迎えに来た両親に対して深く頭を下げた。
「僕の不徳の致すところで、愛理さんにはご迷惑をかけしました。誠に、申し訳ございません…」
いきなり詫びだした彼に、両親は理由も聞かずに謝った。
「こちらこそ、躾の出来ていない娘で……申し訳ありません…」
頭を上げてくれるよう何度も説得した。
でも、彼はそれに耳を貸さず、ずっと俯いてるままだった。
部屋を出て行く時、今までのお礼を言おうかと思ったけど、ずっと目を合わそうとしない彼に何も言えずにドアを閉めた。
かける言葉もなく外へ出て、マンションから離れていく軽トラックの荷台に乗りながら、歪んでいく視界の向こうに小さくなっていくお城を見つめた。
……最後まであたしを見てくれなかった久城さんのことを思った。
ーーあの中に残されたおばあちゃんは、これから先どうなるのだろう…と考えた。