『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
し…んと静まり返った居住空間には、物音一つ響いてなかった。元より日中でも夜間でも、あまり大きな音を聞いたことはない。
エレベーターを出てきた彼が先に歩き始める。
その背中を目で追って、渋々と歩きだした。
(……あたしは、どうしてまたこの廊下を歩いてるんだろう)
此処のように高級な場所が似合う人間でもないのに。
不似合いな格好までして、品位にも欠けてるのに。
彼の鋭い視線に動かされた…と言っても過言じゃないけど、きっとそれだけでもないと思う。
前を歩く人の背中を見越して、その先にある角部屋のドアを見つめる。
その奥にいる筈であろう老女の姿を、どうしても確かめたいという思いがあった……。
ーーーオートロックの外されてるドアは、左に捻るだけで開いた。
丸っぽい手が握りしめる銀色のドアノブを見つめ、ごくっと喉を鳴らした。
「どうぞ、お入り下さい…」
初めて訪れた時よりも緊張する。
あの時彼は、ドアを開けていきなりあたしを抱きしめた。
『ようこそ!俺の花嫁!』
思い出される過去に目頭が潤む。
それを胸に抱いたまま、開けられたドアの奥へと足を踏み入れた。
「お帰りなさいませ」
凛とした張りのある声に驚き顔を上げた。
グレーっぽい髪の毛をした品の良い女性が、目の前の床に座り込んでいたーーーー。
エレベーターを出てきた彼が先に歩き始める。
その背中を目で追って、渋々と歩きだした。
(……あたしは、どうしてまたこの廊下を歩いてるんだろう)
此処のように高級な場所が似合う人間でもないのに。
不似合いな格好までして、品位にも欠けてるのに。
彼の鋭い視線に動かされた…と言っても過言じゃないけど、きっとそれだけでもないと思う。
前を歩く人の背中を見越して、その先にある角部屋のドアを見つめる。
その奥にいる筈であろう老女の姿を、どうしても確かめたいという思いがあった……。
ーーーオートロックの外されてるドアは、左に捻るだけで開いた。
丸っぽい手が握りしめる銀色のドアノブを見つめ、ごくっと喉を鳴らした。
「どうぞ、お入り下さい…」
初めて訪れた時よりも緊張する。
あの時彼は、ドアを開けていきなりあたしを抱きしめた。
『ようこそ!俺の花嫁!』
思い出される過去に目頭が潤む。
それを胸に抱いたまま、開けられたドアの奥へと足を踏み入れた。
「お帰りなさいませ」
凛とした張りのある声に驚き顔を上げた。
グレーっぽい髪の毛をした品の良い女性が、目の前の床に座り込んでいたーーーー。