『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「……大丈夫。なにもしないから…」
怖くない…と優しい声が聞こえる。
そんなふうに甘えさせないで欲しい。
あたしはここを逃げ出した人間なのにーー。
しがみつきたくなる。
『ゆる彼』だと間違えた自分のことを棚に上げて。
癒されたくなってしまう。
…………剛さんに。
カタン…と扉の開く音が響いて、咲子さんが「あら」と声を発した。
泣き出しかけたあたしは、久城さんの肩越しにその人の姿を発見した。
(…おばあちゃん!)
思わず走り出しそうになる自分を抑えて見ていた。
咲子さんはおばあちゃんに近づき、寝室へ連れて行こうとする。
ネグリジェの裾から水が垂れてる。
排泄に失敗して目が覚めたんだ…とすぐに分かった。
(平気かな…)
咲子さんと一緒に出て行く後ろ姿を見送った。
黙ったままでいるあたしから手を離し、久城さんがあたしを見た。
「気になりますか?祖母が…」
自分よりも?という感じ。
そんなことはないと言ってあげたいけれど、やはり同じくらい気にかかる。
あたしは少しでも関わりを持った高齢者のことをそう簡単には忘れられない。
無責任なことをしたけど、やはりケアマネでもあるから……。
「…なります。やはり心配なので…」
適切なケアが出来ているかどうか。
変に興奮させたりプライドを傷つけたりしてないか。
咲子さんがいるなら大丈夫だと思うけど、老老介護が一番危ないことをあたしはよく知ってる。
怖くない…と優しい声が聞こえる。
そんなふうに甘えさせないで欲しい。
あたしはここを逃げ出した人間なのにーー。
しがみつきたくなる。
『ゆる彼』だと間違えた自分のことを棚に上げて。
癒されたくなってしまう。
…………剛さんに。
カタン…と扉の開く音が響いて、咲子さんが「あら」と声を発した。
泣き出しかけたあたしは、久城さんの肩越しにその人の姿を発見した。
(…おばあちゃん!)
思わず走り出しそうになる自分を抑えて見ていた。
咲子さんはおばあちゃんに近づき、寝室へ連れて行こうとする。
ネグリジェの裾から水が垂れてる。
排泄に失敗して目が覚めたんだ…とすぐに分かった。
(平気かな…)
咲子さんと一緒に出て行く後ろ姿を見送った。
黙ったままでいるあたしから手を離し、久城さんがあたしを見た。
「気になりますか?祖母が…」
自分よりも?という感じ。
そんなことはないと言ってあげたいけれど、やはり同じくらい気にかかる。
あたしは少しでも関わりを持った高齢者のことをそう簡単には忘れられない。
無責任なことをしたけど、やはりケアマネでもあるから……。
「…なります。やはり心配なので…」
適切なケアが出来ているかどうか。
変に興奮させたりプライドを傷つけたりしてないか。
咲子さんがいるなら大丈夫だと思うけど、老老介護が一番危ないことをあたしはよく知ってる。