『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。

「そ、そうですか。……そうですよね。あたしったら、また後先も顧みずに怒鳴ってしまって……。
すみません。余計な事をあれこれ言い過ぎました。仕事柄、どうしても本人と家族の関係に目が行くと言うか、無視できないものだから…」


「仕事…？」


久城さんの呟きにぴくっと反応した。
これまで話したこともない仕事の内容について、つい喋り過ぎてしまった…と気づいた。


「愛理さんの仕事って何？…今まで聞いたこともなかったけど、そのスタイルとは何か関係ありですか？
今更ながらで申し訳ないけど、できるなら聞かせて欲しい。帰りはきちんと送らせますから…！」


せめてそれだけでも…という感じで見つめられた。
散々罵ってたあたしを気にも留めず、彼は頼むような視線を送ってくる。

線の薄くなってる瞼の下にある黒目があたしを捉える。

その瞳から逃れられなくなり、仕事のことだけなら喋ってもいいか…と覚悟した。



「…あたしは、高齢者施設でケアマネージャーとして働いてます。介護職員としても携わってるし、介護計画を立てたり家族や医師、看護師なんかとも連携を取り合う重要な役割を担ってるんです。だから……」

「あっ！そこで、あの医師とも同僚だったんだ！」


ギクッとする彼の言葉に背筋が凍った。
恐怖を顔に出してはならない…と思いながら、必死で平静を装った。


「は、はい…そうです。武内先生は…同じ施設で働いてた…仲間でした……」