『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。

いきなりこんな展開になって、頭がパニックを起こしかけてる。

こんな格好のまま行ってもオッケーな場所⁉︎ そうならいいけど、そうじゃなかったら困る。

着替えも用意してきてない。
あたしはこの服のまま家に帰ればいい…と、単純に考えてたから。


「ほ…本宅ってとこに行くんですか？それってどこです？こんな格好で伺っても構わない場所ですか？それならいいけど、ダメなら今日はやっぱり家に帰りたいかなって……」


日を改めて…とか、マズいだろうか。
狼狽えるあたしに目を向けて、剛さんは平然とした口調で言った。


「その格好で十分だよ。実家へ行くだけだから」


「…じ、実家ぁ⁉︎ 」


ちょ、ちょっと待って！
実家って……実家だよね。生まれ育った場所ってことだよね。

そんな所へ行ってどうするの⁉︎ 何するって言うの⁉︎

誰かに会うの⁉︎ …会ってどうするの⁉︎


そもそもあたし、そんな気持ちの用意してないよ⁉︎

覚悟も何も決めてないし、第一まだそんな深い関係でもないでしょ。あたし達……！



あまりにも狼狽え過ぎてたのか、剛さんは可笑しそうに笑いだした。
運転手の中田さんまでが苦笑している。

あたしは二人の微妙な雰囲気を察して、自分の態度が変だったんだ…と気づいた。


「愛理さんの動揺もわかる気がするけど本宅には誰も住んでないよ。ばあちゃんが元気だった頃は咲子さんと二人で暮らしてたけど、今は空き家みたいなもん。だから安心していい」