『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
気にも止めてないような素振りの彼に「はいっ!」と威勢の良い返事はしたものの……


(えっ⁉︎ 今、何て言った…⁉︎ )


ちらりと肩越しに見えるのは、大きな門構えの家。
重要文化財ですか?と聞きたくなるような邸宅の凄さに、ごくん…と喉が鳴った。



「甲本様、どうぞ、こちらから」


後ろのドアを開け、中田さんがスマートにエスコートする。


「す、すみません…」


声を震わせながら車外に出て、改めて目の前に広がる大きなお屋敷を見た。


瓦付きの門扉には二、三段の小階段を上って辿り着くようになってる。
大きな木戸の横に備え付けられた通用口を開け、剛さんがこっちに来るよう手招きした。

左右遠くまで伸びてる外壁。
一体どれくらいの広さがあるんだろう…。


(お寺……じゃないよね。どう見ても人のお家よね…?)


ビクビクしながら階段を上がり、通用口にいる彼に近寄ると……




「ようこそ。我が家へ」



開かれた扉の中へ通された。
緊張で思うように歩けないあたしを気にして、剛さんが背中を押したんだ。


中では公園のような庭園が広がってた。
芝生が敷かれた園内には、形良く選定された木々や植え込みが配置されてる。
その間を抜けるように並んだ飛び石の上を歩いて、剛さんは先に見える日本家屋へと進んだ。


センサーライトの青白い光が足元を照らす。
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