『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「剛さん…」
喉の奥から押し出した声はかすれ気味に響いた。
ハッとした彼が我に返って、するっと体を離していく。
「ごめん…ちょっと嫌なことを思い出して……」
キッチンの明かりを消して歩き始める。
さっきのあたしの言葉などまるで聞こえてなかったふうな彼の背中を見つめながら、この場所に何の嫌な思い出があるんだろう…という気がしていた。
そのまま無言で歩いてた彼が、角部屋のドアの前で立ち止まった。
「…ここが俺の部屋。どうぞ。何もないけど…」
押し開けられたドアの中は洋室だった。
レトロな雰囲気に包まれた部屋の壁紙はあったかい色合いのグリーン。
焦げ茶色の床板はピカピカで、埃の一つも落ちてないように見えるのは気のせいだろうか。
部屋の片隅に置かれたアンティークな感じの本棚には、びっしりと書物が並んでる。
反対側の壁の隅には大きめのベッド。
でも、マンションのとはサイズが違うみたい。
「……ホントに何も無いんですね…」
生活してないから当たり前かとも思うけど、あまりにもこざっぱりし過ぎてる。
こんな中でホントに暮らしてたのかな…と、返って疑いたくなってくる。
「ここは寝室としてだけ使ってたからね。いつもは奥の部屋で過ごしてた」
あそこ…と指差す方向に目を向けると、本棚とは直角の壁に扉がもう一つ。
クローゼットなんだろうと思ってた場所に近づき、カチャ…とドアが開けられた。
「うわっ。グチャグチャ…」
喉の奥から押し出した声はかすれ気味に響いた。
ハッとした彼が我に返って、するっと体を離していく。
「ごめん…ちょっと嫌なことを思い出して……」
キッチンの明かりを消して歩き始める。
さっきのあたしの言葉などまるで聞こえてなかったふうな彼の背中を見つめながら、この場所に何の嫌な思い出があるんだろう…という気がしていた。
そのまま無言で歩いてた彼が、角部屋のドアの前で立ち止まった。
「…ここが俺の部屋。どうぞ。何もないけど…」
押し開けられたドアの中は洋室だった。
レトロな雰囲気に包まれた部屋の壁紙はあったかい色合いのグリーン。
焦げ茶色の床板はピカピカで、埃の一つも落ちてないように見えるのは気のせいだろうか。
部屋の片隅に置かれたアンティークな感じの本棚には、びっしりと書物が並んでる。
反対側の壁の隅には大きめのベッド。
でも、マンションのとはサイズが違うみたい。
「……ホントに何も無いんですね…」
生活してないから当たり前かとも思うけど、あまりにもこざっぱりし過ぎてる。
こんな中でホントに暮らしてたのかな…と、返って疑いたくなってくる。
「ここは寝室としてだけ使ってたからね。いつもは奥の部屋で過ごしてた」
あそこ…と指差す方向に目を向けると、本棚とは直角の壁に扉がもう一つ。
クローゼットなんだろうと思ってた場所に近づき、カチャ…とドアが開けられた。
「うわっ。グチャグチャ…」