『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
壁付けにされたオーディオシステムから流された音楽は聴いたことのある曲だった。
ハッとして彼を見ると、優しい顔をしていた。


「この曲、いつもおばあちゃんが子守唄で歌ってくれたろ?」


グループサウンズが大好きな人で、歌となったら外国のアーティストのものを歌う。
大正時代最後の生まれ年だから…というのが理由で、ハイカラなのが自慢だったそうだ。


「おばあちゃんらしい…!」


ついつい笑ってしまう。
認知症は患ってても、人格までは変わらない。
そういう病気もあるけど、おばあちゃんのは別物だ。


「剛さん達は、おばあちゃんに可愛がられて育ったんですね…」


回ってきた家の中を見たら分かる。

随所に飾ってあった骨董品は確かに凄かったけど、さり気なく置かれた小物や雑貨に、おばあちゃんの優しさが溢れてた。




「……この家で、おばあちゃんが暮らせるようにはできないんですか?」


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