『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
小さく丸まった背中から上着をたくし上げ、その下にある素肌に触れる。


「あ…」


小さな声を漏らす彼女に気づいて、僅かに手を止めたーー。




「…待って……あの……」


今更のように願って彼女が頭を起こした。
真っ赤な顔をした半泣きの女性は、俺の顔を見たまま言った。


「さっきのプレゼンの話……忘れないで下さい。剛さんが感情に流される前にきちんとしておきたいんです。
もう二度と…体を道具にはしたくないから…」


興醒めになるようなことを平気で言う彼女に呆れた。

やはりその辺のお嬢様よりも扱いにくいし、思い通りにもならない。


今夜も据え膳食らわずか…と思いつつ、のろりと身を離した。


自分を落ち着かせるように息を吐き、少しばかり彼女を睨んで言った。


「…分かった。とにかくそのプレゼンとやらの話を聞くよ。全てはそれからでいい。もう焦っても仕方ない気がしてきた……」



< 210 / 249 >

この作品をシェア

pagetop