『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
回廊式になってる廊下を歩いてキッチンの前まで来た。
室内では、トントン…と包丁の音が鳴り響いてる。


咲子さんには予め作って欲しいものは言ってある。

「お任せ下さい」と胸を叩かれた。


だからあたしも、介護のプロとして接する。


「おばあちゃんをこの家で見させて欲しい」…とお願いする。

「この家をおばあちゃんの終の住処にしたいんです」…と訴える。


その為にここへ来た。


だから、もう引き返したりしない…。






「剛はまだなの⁉︎ 自分で呼んでおいて一番遅いってどういうの⁉︎ 」


ドアを開ける前から怒ったような女性の甲高い声が響いてた。


「そう慌てるなよ。結華は会社経営とかはしてないだろう?」

「そうだよ。こっちはそんな暇人とは違うんだぜ。…今日だってこれから客と会うようになってるし」

「客?違うだろ。聖が会うのはいつも女じゃねぇか!」


声色の違う人がお兄さん達だな…と思った。


「いい?」と囁く彼に頷いて、スーハーと深呼吸を繰り返した。


コンッ!と一回だけノックしてドアは開かれた。

開けられた部屋の中にいたのは、グレーヘアをした男性とゆるいパーマをかけたイケメンの男性、四角くて細い眼鏡をかけた男性は椅子に深く座り、怒ったような声を出してた女性は、テーブルの上に腰掛けてルージュを引き直していた。


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