『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「そうですよ。僕達には仕事も家庭もある。何もかも1人で決められる独身の奴らとは違うんです」

「あらっ、独身で悪かったわね!だからって暇なわけじゃないのよ!これでもあちこち営業もしてるし、会社経営という名の下にどっかりと椅子に腰掛けてる人達とは違うんだから!」

「そうだよ。何かって言えば仕事だ家庭だ…って逃げ口上言うけど、こっちだって仕事ならしてるんだ!あんた達よりも稼いでるだろ!必死にやってるからだよ!偉そうにすんな!」

「偉そうとは何だ!女と遊び暮らしてるくせに!」

「そうだよ!自分のマンションを剛に貸して、家賃まで払わせてるのを知らねぇとでも思ってんのか!」

「話をすり替えんなよバカ!今はそんな話をしてる場じゃねーだろ!」

「だったらいつするんだよ!株主総会にも遅れて来るような奴だろう!お前は!」



「あ…あの……」


声をかけたくても、収拾する感じではない。
おろおろとする私の肩を掴んで、剛さんが怒鳴り声を上げた。



「止めろよ!見苦しいっ!!」



この間の夜のように腹の底から出された声は、広い洋室の隅にまで反響していった。


「彼女の話を聞いて欲しいって最初に頼んだろ!誰かに一緒に住んでもらいたいと願うのには理由があるんだよ!それを聞いてからにしろよ!文句を言うのは!!」


声を荒げる人が、どかっ!と椅子に座り込んだ。
腕を組んで全員を睨み、「どうぞ、続けて」とあたしに言った。



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