『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
……剛さんに頭を下げて、あたしは前を向いた。
四人の兄姉は落ち着きを取り戻し、あたしの方に目を向け直した。


「…これからお話するのは、少しだけ未来のことになると思います。話す通りにはならないかもしれません。でも、そうならないと約束もできないくらい確かに起こり得ることだと思って聞いて下さい」


覚悟を持って頂きたかった。
おばあちゃんに愛されてきた方達には、きっとショックなことばかりになるだろうと思ったからーーー。


「おばあちゃんは…あっ、お祖母様は……」

「…いいよ、おばあちゃんで。いつも通りに話して」


他人行儀を止められた。恐縮しながら頷き、いつもの様に話した。


「おばあちゃんが発症してるアルツハイマー型認知症というのは、脳の萎縮が原因で起こります。
進行すれば言葉数も減っていくし、声を発することも難しくなってしまう。
家族に関する大切な記憶を失うのは勿論、生きてきたプライドさえも無くす様な失態も増えていきます。
…寝たきりになってしまうかもしれません。…その可能性も無きに非ずです…」


最悪のパターンを想定しておくことは、ショックを減らす為。

予測が出来れば不安が減らせる。
何も見えてない状態からくる介護のストレスは、必要以上に多くの不幸を生んでるんだ。


「何もできなくなった時に、おばあちゃんの面倒を見られるのはどなたですか?
おばあちゃんのことを何も知らない施設の職員? それともご高齢の咲子さん?
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