『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「…平気ですよ。おばあちゃんと咲子さんが味方してくれたから…」


お姉さんもかな…と呟くと、え…?と小さな声を発した。

その声に微笑んで彼に擦り寄った。
抱くようにして凭れる。
いつもはそれで、あたしの方が溶けていくような感覚に落ちるけど……


(今日は剛さんがゆるくなって……張り詰めてるものを全部、溶かしてって欲しい……)


あったかさの中に香るミント。すーっと胸が安らいでいく。
スッキリするような爽快感があって、頭がクリアになる。

大好きな人の香り。

思い出に残る香りだーーー。



「……あのグラタンは食べれない。グラタンだけじゃなく、この家もばあちゃんも、俺にとっては鬼門みたいなもんだ…」


鼻を擦りながら話したのは、さっき食堂で聞いた話。

我が儘な末っ子が生んだ守れない約束ーーー。


「二度と両親が戻らなくなるとは考えなかった。そんなつもりで言ったワケじゃなかった……」


たわいの無い子供の願望。
でも、そのトラウマに今も縛られてる彼。


「情けないだろう…」と呟いた。
胸が締め付けられそうになって、ううん…と頭を横に振った。


「剛さんらしくていいと思う。何処もかしこも完璧な人なんて、あたしには似合わないから…」


安心した…と言ったら怒られるかもしれないけど、この部屋と同じ雰囲気が彼の中に在ることにホッとする。
『ゆる彼』で良かった…と、気持ちが落ち着いてくる。

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