『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。

何の連絡もないまま一週間が過ぎた。

やはり失敗だったか…と諦めだした頃、仁科の叔母さんが家へやって来た。



「先日のお見合いの返事なんだけど……」


暗い口調で話しだす叔母さんの顔を眺めた。
眉間に薄い縦皺が寄って、如何にも言いにくそうにしている。

これはもう完全にアウトだな…と諦めて、あたしはほぅ…と小さな溜息を零した。



「久城さんから言われたのはね……愛理ちゃんに今すぐお嫁に来て欲しいんだって。…いきなりで申し訳ないけど、式や披露宴とかは後回しにして、とにかく早く一緒に暮らしたいそうなんだけど……」


「そうですか……」


全く…と言う程、話を聞いてなかった。
あたしは叔母さんの言葉を全て真逆に捉えてて、（あーあ…）とがっくり項垂れてた。


「愛理ちゃんはどう？一緒になってもいい？お式や披露宴、先に延ばされても平気？」

「あたしはどっちでもいいです…どうせ、何しても一緒ですから……」


人間の耳って、一体どこまで自己都合なんだろう。
あたしはこうまで言われても、まだ反対の意味に捉えてて、全く顔も上げれない状態だった。


「だったら、先方にもそう返事としとくわね！…良かったわねー愛子さん、３０になる前に娘が結婚してくれることになって！」


きゃあきゃあと燥ぐ二人の声に、ようやく顔を上げてみた。
あたしが断られたことが、そんなに喜ばしいことなんだろうか…と落胆の色を隠せなかった。