『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「本当に済まない。この埋め合わせはいつか必ずするから。それと、来週のことなんだけど…」


「来週…?」

頷く彼に「何ですか?」と聞いた。
『ゆる彼』は、困ったような表情を浮かべ、もう一度、「ごめん…!」と謝った。


「来週、出張で海外に行くことになってて…得意先の商品の買い付けなんだけど、どうしても先方が俺に一緒に行って欲しいと言うものだから…」


勿体ぶった言い方に、ふむふむ…と理解を示した。
久城さんは安心した表情で、次に続く言葉を言った。


「だから一週間程留守にするけど、その間は好きに過ごしていいから…」

「へっ…⁉︎ 」


茫然…と言うより、唖然。

今夜だけでなく、来週も一週間、一人きり⁉︎

結婚初夜だけでなく、最初からスレ違い…ってこと⁉︎


「あ…あの……」


あたし達、結婚するんだよね…てか、結婚するから婚姻届にも署名したんだよね⁉︎

なのに、あたしは最初から一人で此処に取り残されて、新婚気分も何もかも後回しにされるってことーー⁉︎


(それじゃあ何の為に結婚を急いだの⁉︎ そんなに忙しいなら、もう少し後からでも良かったじゃん…)


言いたい言葉は口をついて出てこなかった。
久城さんの申し訳なさそうな顔を見てると、何も言えなくなってしまった…。


「わ…分かりました。…だったら来週は実家に帰っておきましょうか…?」


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