『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「久城さんの仕事についてはまだまだ謎も多いけど、あたしは騙されてる様な気はしないよ。
あの人は普通に寂しそうにご両親のことも話してたし、仕事についても忙しい役職に就いてるから…と説明はしてくれた。
何よりもあたしの自由を認めてくれてる。浮気さえしなければいいって、そう言ってくれたもん…!」


自分から愚痴りだしたのに、一生懸命『ゆる彼』を弁護するあたしに呆れるメグ。

「ノロケたいなら今度にして。私はこれでも忙しいのよ⁉︎ 」と怒鳴って、最後にこう付け加えた。


「後から騙されたと言って泣きついてこないように!これまでと同じ事のないよう、よーーっく観察しとくのね!」


……とにかく結婚おめでとう。お幸せに…と言って電話は切れた。

散々なメグの毒舌ぶりを聞いた後では、余計に寂しさが増してくる。

だだでさえ広いリビングの片隅で、あたしは小さく膝を抱え込んだ。





「はぁ…」


カーテンを引いていないリビングの窓から、夜景がよく見渡せた。
あの沢山の明かりの一体どこで、彼が働いてるのかもあたしは知らない。

どんな役職に就いていて、どういう仕事を任されているのかも分からない。

何も知らないのはお互い様。

彼だって、あたしのことは何一つ知らない筈だ。



(…だからこそ、時間をかけて話したいのに……)


ゆっくりと顔を突き合わせて語り合いたい…。
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