『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
(ああ…!これこれ!これを夢見てたの…!)


スリスリするのが夢だった。
ぽっちゃり系彼氏のお腹に、自分の頭を擦り付けるのが長年の夢だった。


(やっと叶った!神様、ありがとう!)



昨日の落ち込みも忘れて、うっとりとその感触を味わう。

最初は驚いてた『ゆる彼』も、直ぐに慣れたように抱き返してきた。




「…一人にさせてごめん」


謝る彼に「ううん…」と頭を横に振った。

髪の毛で擦られたのお腹が擽ったかったみたいで、「こそばゆい…」と笑われた。


いい加減に離れなければならないのに、離れ難くて仕方なかった。

この人のお腹の上で眠りたい。
ふわりとした肌の感触を感じながら、大きく深呼吸したい。
とくとく…と流れる血流音を聞きながら、心ゆくまで微睡みたい…。


願望が次から次へと湧いてくる。その思いを溢れさせないようにしようと、精一杯我慢していた。




「…あの…」

「んっ⁉︎ 」


とくとく…と言うよりも、速い動悸に気づいて離れた。

目の前にある人の顔が薄っすらと赤い。
もしかしたら、あたし、その気にさせてしまった…とか?


「あ…あの……」


後ずさりながらワケを考える。

長年の夢を堪能してました…とは今更言えない。
彼に火をつけたのだとしたら、その責任は負わないと……。


ゆっくりと凭れてこようとする人の体重を受け止めたくて、両腕にぐっと力を込めた。
筋肉質な上腕部のことを思い出して、ぎくっと焦ってしまった。

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