『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「…ばあちゃん…久しぶり…」


何年ぶりに会っただろう。
一番上の兄さんが結婚した時が最後だとすると、ざっと5年ぶりくらいか。


あの頃は、今よりも肌艶のいい顔色をしていた。
皺もシミもない上品なばあちゃんの姿は、俺たち孫の自慢みたいなものだった。


……でも、今のこの雰囲気は何だ。


肌や髪は荒れきってる。
衣類はヨレてほつれてても平気そうだし、冬だというのに靴下すらも履いてない。
袖口に付いたご飯粒は干からびて固まってる上に、上着のあちこちには食べこぼしのシミが付いたままだ。



(これは本当にばあちゃんなのか…?)



「……結華ちゃんこの人は違うよ……剛ちゃんじゃない。剛ちゃんはまだ幼稚園だもん。こんな大きいことないよ」


騙そうとしてもダメ…と、プイと背中を向けられてしまった。
唖然とする俺に視線を向けて、結華は「またか…」と呟いた。


「あんただけじゃないの。兄さん達も私も、おばあちゃんにとっては子供だと思われてるの。時々分かることもあるんだけど、すぐに記憶が混乱してしまう。
大人の姿をしてるのに私はいつまで経っても子供で、自分が面倒見てるくらいの気持ちになるらしいの…」


お陰ですぐに食べ物を作り出す。
自分が空腹だと感じると、そこで思考がストップする。
食べても、食べてない…を繰り返し、挙げ句の果てには近所に悪口を言いふらす。

料理を作ってる時だけはまともだけど、片付けは全く出来ない。
どうにかすると、用意する物もおかしな時がある。


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