『ゆる彼』とワケあり結婚、始まりました。
「お孫さんは何人いますか?」

「五人よ。男の子四人、女の子は一人」

自満そうに答えてる。でも……


「後ろにいる男の方は何番目のお孫さん?」


武内の質問に、おばあちゃんはくるりと後ろを振り向いた。
久城さんはにこりともせず、その眼差しを受け止めた。


「一番目。この子の名前は『仁ちゃん』。それからこっちは四番目の『結華』よ」


胸を張った答えは大いに間違ってる。
久城さんは天井を仰ぎ、自分の手で目を覆った。


「…そうですか。では久城さん、これからお見せする物をよーく見て覚えて下さい。後から何があったか答えて頂きますから。忘れないようにして下さいね。いいですか?」


「ええ、いいわよ」


自信に満ち溢れてるおばあちゃんの姿もそこまでだった。

見せられた物の名前は殆ど覚えきれず、その後の質問にもほぼ答えられず、沈黙したり笑ってごましたりする場面が多く見られた。


あたしは間違いない…と認識を深め、大きな溜息をついた。
その様子を眺め、武内はふ…と笑みのようなものを浮かべていた。





「間違いなく認知症を発症しておられますね…。初期症状はとうに過ぎています。今は中期に入り始めた頃かな…」


脳外科で撮ったCT画像も合わせて診断が下る。
おばあちゃんの認知症は、あたしが予想した通りの『アルツハイマー型』だった。


久城さんは愕然とした顔つきで武内の話を聞いてた。
おばあちゃんは検査やテストで疲れきり、診察室横の休憩室で休んでいた。


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