〔B L〕朽ちた無花果
医者と患者
僕は心の医者ですから。
«晴side»
“篠崎 晴”
今日もその名前と顔写真が載っているネームプレートを、白衣の胸ポケットにくっつける。
ガラッ
「こんにちは、今日はいい天気ですね。」
そして、診察室の扉を開けた患者さんに、決まってそう言うんだ。
「僕は篠崎晴(シノザキ ハル)といいます。
貴方を助けるために、ここに来て貰いました。」
「うっせぇ。俺は至って健康だよ。」
「いいえ。
貴方は…とても深い傷を負っている。
違いますか?
佐那斗君。」
そう、僕は精神科医だ。
「…別に。」
「僕と、お話をしませんか?」
「なにを。」
「んー…例えば、小さい頃「見てた夢なんてねーよ。」
夢がない、か…
それを聞くつもりはなかったんだけど、やっぱり同情されるのが嫌いな子みたいだなぁ。