〔B L〕朽ちた無花果

ポンポン

無意識に、佐那斗君の頭を撫でてしまう。

「…なんでだよ、アホ医者。」

「…ん?」

「なんでアンタがそんな顔してんだ。」

え…
僕は今、どんな顔をしていたんだろう。

「…っご、ごめん!
なんでも______」

ガシャーン

キャァァァァァアア

なんでもないよ。

その言葉は、大きな音と悲鳴にかき消された。

曲に聞き入っていた観客も、何事かとざわざわしだす。

「……!~~…!」

前の方の席に、立ち上がって何かを叫んでいる女の人がいた。

よく見ると、手元が光っている。

アクセサリー…?

その女の人の周りの観客は一斉に逃げ出し、それにつられて周りの観客も逃げ出していった。

当の僕はと言うと、なにが起きているのか全く分からず、ぼーっと突っ立っていた。

横で佐那斗君が僕を引っ張り、僕が我に返ったときは、観客の半分が逃げていた。
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