〔B L〕朽ちた無花果
「おい、なんかヤバいよ…!
逃げよう、早く…」
「いや、でも女の人が…」
「あの人ナイフ持ってんだよ!?
警備員が何とかしてくれるだろ、早く…!」
「いや…僕が助けなきゃ。
佐那斗君は、先に逃げていいよ。
僕は…心の医者なんだ。
目の前で心が狂っている人を放ってなんかおけないよ。」
「…っだったら、俺も逃げねぇよ。」
「…分かった、ただし僕の前には出ないこと。」
もし佐那斗君に傷なんかつけたら、僕が僕自身を許せなくなる。
観客が全員外に出た後、いつの間にかステージの上に立っている女の人の方へ僕は歩いていった。
女の人は、アイドルの3人に向けてナイフを握っている。
「アンタにようなんかない!
さっさとどっか消えてよ!」
僕を見て、女の人は言った。
僕はいつも通りのセリフを言う。
「こんにちは、今日はいい天気ですね。」
「はぁ?
消えろっつってんの、聞こえないの!?」
「落ち着いてください、僕は医者です。」
「医者?
医者があたしに何の用なの!?」