〔B L〕朽ちた無花果
「どう?
これで少し、僕のこと知りたいと思ってくれたかな?」
「…別に。」
「そっか。
でも、少しずつ興味を持ってくれると嬉しいな。
佐那斗君の心の準備ができるまで待ってるからね。」
それは、半分慰めの意味。
もう半分は、自分への甘え。
心のどこかで、勇気なんて出さなくても良いと囁いている自分がいるから。
「…俺の気持ちが痛いほど分かる、ね。
その言葉に嘘はないんだろうけど、なんで?
怖くねぇの?
言いたくないこと言うのって。」
「…怖いよ、とても怖い。」
少し、声が震えた。
「でも、このままじゃ前に進めない。
…でしょ?」
佐那斗君に言ってるようで、本当は僕自身に向けた言葉。
必死に前を向いて生きてきた。
でも、前に進めてはいない。
ずっと同じ場所で、後ろから僕を引っ張る闇を無我夢中でふりほどきながら、前を見ているだけ。
希望を語るのだって、僕が臆病だからだ。