〔B L〕朽ちた無花果
「今の言葉、撤回していただけませんか。」
「…なんです?急に真面目な顔して。」
「高校生だからといって、佐那斗君がなにもできないなんて事はありません。
佐那斗君はいままで、ずっと頑張ってきたんです。
精一杯、周りと戦ってきたんです。
高校生だと思ってなめていると、痛い目を見るのはマヤさんですよ。」
「…貴方はそういう顔もできるんですね。
今日はここに来て本当に良かった。」
「マヤさんはきっと、小さい頃から周りにちやほやされて育ったんでしょうね。
何の苦労もせずに。
そんな人に、佐那斗君の気持ちは分かりません。
帰ってください、診察中です。」
…今の言葉、言って損した。
マヤさんがなんの苦労もなくアイドルのトップにのし上がったなんて、そんなわけないのに。
「…あの、すみま「そうですね、俺に佐那斗君の気持ちは全く分かりません。」
僕の言葉を遮ったマヤさん。
その顔には、少し失望の色が浮かんでいた。
「それでは、失礼します。」
マヤさんはサングラスと帽子をつけ、診察室を出て行ってしまった。
僕は、なんてことを言ってしまったんだろう。
精神科医なのに、人を傷つけてしまった…