〔B L〕朽ちた無花果
いつものように気の抜けた顔で、へらっと笑って手を振る先生がいた。
白衣を着ていない先生を見るのは2度目。
ライブの時と、今。
…慣れない。
胸がきゅっと締まる感じ。
なんだ、これ。
私服なんて、白衣とさほど変わらないはずなのに。
衣服が変わっただけで、どうして心臓がはやくなるんだ。
俺、病気なのか?
…そうだ、きっとそうに違いない。
俺はもう一度振り向いて、先生を確認するとまた、前を向いた。
(…手なんか振ってんなよ、小学生じゃあるまいし。)
そう思いつつも、心のどこかで、来てくれた、と喜ぶ自分がいる。
「それでは授業を始めます。」
「起立。」
…始まった。
だるい授業が、また。
でも、今日は不思議とつまらなくなかった。
後ろの目線を背中で気にしながら、必死に気にしてないフリをした。
簡単な問題も、何度も読んだ教科書も、つまらなく感じることはなかった。