〔B L〕朽ちた無花果

「アンタにとって俺は、患者の1人だ…ッ、だから、そんなにっ…!「それは違うよ!」

晴さんは体を離して、大声を上げた。

晴さんが、怒鳴るなんて…

「…っあ、怒鳴ってごめん。

確かに、他の患者さんにも元気になって貰いたい。

だけど、佐那斗君にはそれ以上に…幸せを、取り戻して欲しいんだ。」

…そうやってまた、困ったように笑う。

「…どうせ、アンタとっくに知ってんだろ、俺のこと。

それでいて、俺から話すのを待ってる。

…どうしてそんなに優しいんだ。
どうして…っ!」

「……僕も君と同じだから。」

「同じ…?
っじゃあもしかしてアンタも「懐かしい顔だな。」

…っ!?

背後で声がしたと思ったらそれはうちの学校の保険医だった。

確か、名前は…

「もしかして…、たか君…?」

あぁ、そうだ。
高遠 裕吾、だった。

「久しぶり、ハル。」

「なんで、ここに…」
< 56 / 79 >

この作品をシェア

pagetop