〔B L〕朽ちた無花果


«裕吾side»


久々に見た顔だった。
白い肌に、猫毛の強い髪。

すべてが綺麗で汚れていない、昔とは大違いの顔。

…安心した。
今は無事のようだな。

「…あれから、どうしてた?」

「っその…」

苦しくて、辛くて。
それで、お前は逃げ出した。

そんなの分かってる。

ただどうして俺に頼らなかった?
俺は…そんなに頼りなかった?

「俺に助けを求めればよかったのに。」

「…できないよ。
だって、そんな事をしたらあの人は君を傷つける。」

「そんなのッ…!」

そんなの、どうでもいい。
どうでもよかったのに…!

「…あのロクデナシは、死んだのか?」

「…分からない。
たか君も、知らないんだ…」

「あぁ。
お前が消えた後、すぐにアイツも消えたからな。」

何があったんだよ。
お前は消えた後、何をしてたんだよ。

…生きていくために、中学生のガキがたった1人で。
< 58 / 79 >

この作品をシェア

pagetop