〔B L〕朽ちた無花果

なにを、したかなんて。

(分かりきったことだろ…)

「…辛かったな。」

「僕は、別に…」

ハルは綺麗だ。

綺麗で、純情無垢で、真っ直ぐで。


だからこそ、壊れやすい。


綺麗だから、汚れたときの洗い方を知らない。

純情無垢だから、悪意の受け止め方を知らない。

真っ直ぐだから、曲がったらどうすればいいかわからない。

そもそも、なにが曲線か分からない。

そういうヤツは、壊れたらもう直らない。
繊細すぎて、もとに戻せない。

(…俺は、それが一番怖い。)

どこまで進んでいいのか。
一歩間違えれば、お前を壊してしまう。

足下の見えない道を歩くも同じ事。

その道の脇には隙間なくスイッチが散りばめられていて、一歩でも道を誤ればそのスイッチが押され、ハルは壊れていく。

ハルは俺が治す。
少しずつ、壊さないように。


壊れないように。

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