〔B L〕朽ちた無花果
«晴side»
「…辛かったな。」
「僕は、別に…」
辛くなんかなかった?
ちがう。
痛くて辛くて苦しくて。
もがいてもあがいても息ができない。
まるで海の奥底にいるみたいだった。
水面に上がろうとしても、水が腕にまとわりついて動けない。
そもそも、浮かんでいってるのか、沈んでいってるのかも分からなかった。
「……、」
あの景色を思い出しそうになって、僕はあわてて頭を振る。
「今は、心の内で苦しんでる人を大勢救うのが僕の目標なんだ!
佐那斗君は、特にね。」
「…ヘタクソな笑顔はやめろ。
分かってる、まだハルの心は救われてない。
そんな状態で、自分も救えていないのに、人を救えると思うのか?」
ハハッ…
ごもっともすぎて、なにも言えないよ。
でも、僕はもういいんだ。
救われなくても、いい。
救われちゃいけないんだ。