恋する左耳は、嘘がつけない
うそ、と言いたくなるのを飲み込んだ。


節の高い指が、わたしの髪をすくって左耳に掛ける。熱を持ったその色を確認した日向くんは、真っ赤、と呟くように少し笑った。


「分かってる、から、……髪、おろして……」

「声へろへろじゃん」

「だって、」


声はへろへろだし心臓はうるさいし、もう泣きそうだよ。嬉しいんだか困ってるんだかもよく分からない。多分一番は、恥ずかしい気がする。


湯気が出そうにのぼせた頭でどうにかお願いすると、すぐに髪がおろされた。よし、と呟いているから、耳が見えなくなったんだと思う。


「左京さん左京さん」

「なに?」

「耳赤くなるのはかわいいんだけどさ」

「かわいくない」

「かわいいよ」


断定されて反応に困るわたしを放って、日向くんは先ほどおろしてもらった髪の中に手を差し入れた。


指先がそっと耳に触れ、あっついね、と嬉しそうに笑っている。


うぐ。だって恥ずかしいんだもん。わたしは全然嬉しくない。
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