マスク男子
「恋人同士みたい…」
ポツリと呟くと郁くんが小さく笑った
「何言ってるの?付き合ってるんだから"みたい"じゃないでしょ?」
「え、うん…まぁ、そうなんだけど…」
そうなんだけど…
そうじゃない…
私は本物の恋人になりたい…
郁くんの気持ちが欲しい…
「あ…」
急に郁くんが止まった
「ん?」
郁くんの目線の先を辿る
そこには…
「田中くんとサキちゃんだ」
浴衣を着た田中くんはとても楽しそうだ
両手に食べ物を持っている
普段着のサキちゃんは呆れてる
田中くんに勧められたタコ焼きを断っている
「結局来たんだね?」
「田中くんの粘り勝ち?」
「かもね」
あれだけ拒否してたサキちゃんをどのように連れてきたんだろう?