貴方がくれたもの
☆★

道子は居間でCDを聴いていた。
隣では祖母が半分寝ながらテレビを見ている。
このCDに入っている5曲目、最後の曲は流行りのポップス調で、道子が生で聞いたものだった。

キラキラと弾けるように音が飛び、高架下でのアカペラもよかったと思ったはずだったが、合奏はさらによかった。

曲が終わったところで、イヤフォンを外し、道子は置いてある絵葉書に手紙を書こうとペンを持った。

そうして、ふとテレビに視線を移した時だった。

調度今まで聞いていた声がそこから発せられたような気がして、道子はテレビを凝視した。

一見すると陰気に見える青年が、アナウンサーからのインタビューに答えていた。
後ろに流れる音楽のボーカルがこの青年のようだった。

『印象に残った出来事っすか?うーん、ああそうだ。俺、一回全部やめようと思った時があったんですよ。
その時に家出少女に出会いまして。心細そうにしてたんで曲を歌ってみたんですよ。
そしたら目をキラッキラさせて聞いてるもんだから、おれ思わず売れ残ったCDあげちゃって。まあ後で仲間にはすごく怒られたんですけど。
その子に会わなかったら音楽やめてたかもしれないっすね』


青年はそう言って、無邪気な顔で笑った。

道子はその笑顔に、閃くものを感じた。そう頭を撫でてくれたあの人のあの時の笑顔だ、と確信し、迷わずその感激を目の前の葉書いっぱいに書き込んだのだった。

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