さよなら、先生
「あ、その後すぐに付き合ったわけじゃないぞ。…その時は断ったんだ。先生が生徒と付き合うわけにはいかないしな」
「へー…」
「でもな、その子はまた卒業式に、先生に告白してきてくれたんだ」
そう言った先生はスッと息を吸い、眩しそうな顔で空を見上げた。
ううん、違う。
空を見上げていたんだと思っていたけど、先生はさっきから目の前にあるイチョウの木を見ていたんだ…と、今までの話しからそれが分かった。
噛んでいた唇が痛くなり、今度は拳に力を込める。
自分の爪を手に食い込ませるようにギギギッ…と握り締めると、心の痛みが少しは和らいでいくように感じた。