嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


言わなきゃ・・・・・わたしも・・・・・!

「あのっ、わたしーーー」

「けどごめん」

勢い込んで言葉を発しようとしたわたしを池上くんの『ごめん』が引き止めた。


ごめん・・・・・・・・・・?



「こういう関係になったこと、会社では内緒にして欲しい」

「・・・・・あ、それは勿論・・・・・」

「知られたくないっていうか、知られると面倒なヤツがいるんだ」



池上くんの声が、こんなに近くにいるのに遠ざかっていく。

頭に浮かんだのは、美しい秘書課のあの人。

幸せな気持ちでいっぱいだった心が一気に冷えた。

その後、何を食べて、何を話したのか、覚えていない。

ただ、ひたすら笑顔が強ばらないようにしたことだけ覚えていた。
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