嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
手に入れたきみ。
キミを知ったのは高校1年のとき。
どちらかというと地味で物静かなキミと、クラスの中心にいて周りに騒がしいヤツばかりいたオレには同じクラスといえど接点はなかった。
ポカポカ春の陽気が気持ちいい昼飯が終わった後の5時間目。
苦手な古典で必死に瞼を押し上げようとしていたオレの耳に入ってきた朗読の声。
高くもなく低くもないちょうど良い高さ、やわらかで穏やかでそれでいてどこか凛とした声、淀みなく程よいスピードで耳に心地よく入ってくる。
誰だ?
声の主を目で探すと、真っ黒なおかっぱ頭に黒縁メガネをかけた女の子。
大原千雪、それがキミの名前だった。
2年生になって、理系のオレと文系のキミはクラスが離れたけれど、友達と笑い合いながらおしゃべりしているキミと廊下ですれ違ったりすると自然にキミの声だけを耳が拾っていた。
好きな声だな、ただそれだけだったけれど。
自由登校になった高3の冬。
卒業式で答辞を読むオレは、原稿を書くのに悩み、何かヒントがないかと図書室で本を探していた。