嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
その几帳面さがなんだか嬉しい。
暦は2月になり、私立大学の受験が始まり皆は忙しくしていたみたいだけれど、相変わらず図書室には静かでゆったりした時間が流れていた。
「あ、雪」
ふと本から窓の外に視線を移して気が付いた。朝から今日は特に寒いなと思っていたけれど・・・・・。
ぼたん雪やから積もらへんか・・・・・。
今日は池上くんは来ないかな・・・・・とぼんやり考えていたら勢いよく入口の扉が開いた。
「最悪や〜。雪やなんて聞いてへん」
池上くんの肩に、頭に、雪が水滴になっている。
トートバッグからタオルハンカチを出して、手渡そうとした。
「手ぇ冷たい。大原拭いてよ」
「ん・・・・・」
肩に付いた水滴を拭いてあげて、頭を拭いてあげようとするけれど155センチのわたしがわたしより20センチは高い位置にあるものに届く筈がない。
「池上くん、頭は物理的に無理。届かへん」
池上くんがふっと笑う。