嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


会社のエントランスで奈々と別れ、自分の部署のフロアに戻った。

昼休みの終わりまでにはまだ5分くらいあるので席にいる人もポツポツだ。池上くんもまだ戻っていない。

「成海さん」

自分の席に着いてデスクの一番下の引き出しにバッグをしまっていると神林くんに声をかけられた。

「ん?」

「申し訳ないんですけど書類作成、今日帰るまでにお願いしたいんですけど・・・・・」

「大丈夫よ、やっておく。どこの?」

「助かります。えっと山川さんとこのなんですけど・・・・・」

神林くんが空いている隣の席に腰を下ろして自分の手帳を開き、わたしに説明を始める。メモを取りながらそれを聞く。

「5時には仕上げとくね」

「さすが成海さん!」

「オーバーな・・・・・」

そんなに難しいものでもないのに大袈裟だ。神林くんが事務イスのキャスターを転がしてわたしの方ににじり寄って来た。

「内緒なんすけどね・・・・・」

神林くんが声を顰めるので顔を近付ける。
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