嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


「いいだろ別に。他の男を紹介しようとかするからだ」

思い出して不機嫌になる。

「カノジョ、あの優しい声で『おじいさま』とか言っちゃったらもう会長メロメロじゃない?」

「バラしたら殺す。ってかお前秘書課の噂をちゃんと否定しろ」

「噂?ああアンタと婚約間近って?大丈夫よ、わたし来年の秋に結婚決まって冬にはアメリカ行きますから〜」

三条には大学時代から付き合っている男がいて、こないだも2人で急にオレのマンションに来てタワーマンションとか生意気だとか大騒ぎしやがった。

オレとの噂を敢えて否定しないのはきっと社内で言い寄ってくる男どもの体のいい虫除けにしているに違いない。

「結婚か・・・・・」

「羨ましかったら池上もしたら?」

グラスに口をつけて一気に飲み干す。


千雪の笑顔が頭に浮かぶ。

10年たっても鮮やかに蘇った恋心。

なんだか無性に千雪に会いたかった。

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