嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
貴方を諦めないとダメですか?


仕事が終わった金曜日の夜ウチに来て、土曜日の夜に帰って行く。日曜日まで一緒にいるとお前の体力を根こそぎ奪ってしまいそうだからと。

それが本当か嘘かは敢えて考えない。

池上くんと過ごす甘い週末にもだいぶ慣れた。


年末年始の休みが終わり、いつも通りの日常の開始。

「成海、今日中に見積書を2通つくっといて」

パソコンから視線を上げて池上くんに顔を向ける。

「はい、どこのですか?」

池上くんが手帳を取り出してパッと開けた。広げたページにはわたしがクリスマスプレゼントとしてあげた丸いシルバーのブックマーカー。

何がいいだろうかと散々悩んでジュエリーブランドのそれにした。値段を知られてもきっと負担には思わないだろう。

ちゃんと使ってくれてる。

池上くんもわたしにクリスマスプレゼントをと思っていたみたいだけれど、年末にホテルのレストランでの食事を強請って終わりにした。

形で残るものは別れた後に辛すぎるから。

お正月も祖父の家に呼ばれているからと会えなかった。

2人で過ごせるのはわたしのあの小さな古い家の中だけ。
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