嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
いい匂いだな・・・・・と後ろを振り返る。
「あら、えっと・・・・・成海さん」
ツヤツヤの髪の毛を揺らし、整った顔に思わず見蕩れてしまうような綺麗な笑みを浮かべる女性。
会いたくなかった人。
「あ、お疲れ様です」
ポーンっとエレベーターの軽い到着音がして扉が開き、2人で乗り込んだ。
自分の階数ボタンを押して、三条さんに何階かを聞こうとすると横から伸びてきた細く長い指が最上階のボタンを押す。
白い左手。
その手に目が釘付けになった。
「指輪・・・・・・・・・・」
薬指に三連の輝く指輪。
ブランドに疎いわたしでも知っている有名な指輪。
「あ、気が付いた?」
「はい、すごく綺麗・・・・・」
「ありがと。池上から聞いてない?秋に結婚が決まったの」
花が綻ぶように艶やかな笑顔をする女性。
心臓が、止まる。
全身の血液が、凍る。
笑え。
泣くな。
「おめでとうございます」
震えないように振り絞った声。