嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「ふふっ・・・・・ありがとう」
自分の階に着くと逃げるようにエレベーターを降りた。
給湯室に飛び込み口を押さえる。
そうしないと叫び出してしまいそうだった。
この間よりも衝撃が大きくて打ちのめされる。
気管支が狭くなって聞きたくない不快な音を鳴らしだす。
風邪をひいても、アルコールを飲んでも、精神的にショックを受けても、わたしの気管支は壊れて嫌な音をたてる。
いつも持ち歩く小さな吸入器をポケットから取り出して空気と一緒に薬を吸い込み取り敢えず落ち着かせた。
池上くんに頼まれた見積書と今日中に入力しないとダメなデータと・・・・・
ああ、なんだ・・・・・・・・・・。
意外と冷静だ。ちゃんと仕事のことが考えられる。
どうしても浅くなる呼吸を整える。
大丈夫、定時までは頑張れる。
今日は金曜日、週末はゆっくり休めるから今だけ頑張ればいい。
給湯室を出て仕事に戻った。先にスマホで池上くんに週末は急に実家に帰ることになったとメッセージを入れておく。