嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜


折角自立しようと就職と同時に家を出たのに。

大部屋の空きがないと入れられた個室。ベッド脇の椅子に健太郎さんが座る。


「あの・・・・・ひとりで大丈夫やし・・・・・帰ってええよ?」

「・・・・・風邪もひいてない、アルコールも飲んでないとしたら後は精神的なもんだよな。何が原因だ?」

言える訳ない。

「千雪!」

「・・・・・もうすぐ28だよ?アラサーだよ?言えへんことかてあるし・・・・・」

「主治医に聞いたらあかんことなんかない」

・・・・・・・・・・何それ。
どこのオレ様・・・・・・・・・・。
鼻からの酸素吸入の細い管が煩わしい。

「今ここで斉川さんに電話して聞いてもええけど?」

「・・・・・・・・・・・・・・・失恋」

「はぁっ!?」

「失恋したの!もうほっといて!」

興奮したせいかまた咳が出る。

「あの上司か?」

咳で揺れる身体が言い当てられて止まった。

「・・・・・・・・・・違う」
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