嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「違わへんな。こないだお前の付き添いで来た時の態度、あれただの上司ってカンジやなかった」
あの時はまだただの上司で、これからまたただの上司になるだろう。
「・・・・・なんでフラれた?身体のことか?」
フラれたこと前提なの?
「身体のこととか関係ない。寧ろめちゃくちゃ気を遣って貰ってた。優しくしてもらっていい人だった」
目を合わさないようにしているのに、健太郎さんの視線が痛い。
大仰に溜息をつかれた。
「ーーーーーーお前、子供の頃から嫌なこと独りで溜め込んで我慢するとこあるからな。それが身体によくないんだぞ。誰かに吐き出して楽になれ」
涙がほろりと零れる。
池上くんとのことが辛いのか、健太郎さんの優しさが胸に痛いのかわからなかった。
池上くんと会わない週末。
これから自分がどうすればいいのかゆっくり考えよう。
答えは一つしかないけれどーーー。
結局、月曜日の朝の回診で異常がなければ退院してもいいことになった。