嘘つきスノウ 〜上司は初恋の人でした〜
「千雪」
労るような声音なのに身体が固まる。その次に言われる言葉が怖くて。
両頬を池上くんの手が包む。
「オレ、誰と結婚するの?」
見上げられて視線が絡んだ。
嗚咽が止まらない。
「オレ、千雪がいちばん大切なんやけど?」
真剣な顔。
「仕事中でも千雪と喋る他の男に嫉妬するし、千雪が相手だと簡単に理性とばすし」
頬を引き寄せられて、膝立ちになった池上くんが額や頬に啄むようなキスをする。
「千雪が好きだよ、千雪を愛してる」
キスが唇に到達する。
「何がそんなに千雪を不安にさせてる?なんでそんなにオレに愛されてる自信がない?」
自信なんてあるわけない。
今も昔も賢くて優しくて誰もが振り返るほど素敵で。
なんの取り柄もないわたしが、あなたの横に立って、どんな自信が持てるというのだろう。
何度もあの雪の日の思い出が心に浮かんで、 切なくなった。
「だって・・・・・10年前・・・・・あんなにはっきりフラれて・・・・・」
終に口にしてしまったーーーーー。